注意・欠如多動症とは
ADHD(注意欠如・多動症)とは、周りの同年齢の子と比べて注意を持続させることが困難であったり、順序立てて行動することが苦手であったり、落ち着きがない、待てないなど行動の抑制が困難であるといった特徴のために、日常生活に支障をきたす発達障害の一つです。12歳以前からこれらの行動特性が見られ、学校、家庭、職場などの複数の場面で、困難が見られる場合に診断されます。
学童期の子どもの3〜7%に診断されており、男児の方が女児の3〜5倍多いと言われています。
注意欠如・多動症の原因
何らかの遺伝的な要素や、妊娠期間中における喫煙やアルコール摂取などとの関連も疑われていますが、原因についてははっきりしていません。
脳内の神経伝達物質である、ドパミンやノルアドレナリンの機能が低下していることが報告されています。
注意欠如・多動症の症状
注意欠如・多動症の症状はすべてが同時に現れるということではなく、「不注意が目立つ場合」や「多動・衝動性が目立つ場合」、また「すべてを併せ持つ場合」など、その人によってさまざまです。
また、成長とともに状態が変化することもあり、大人になってその特徴が目立たなくなる場合もあります。
不注意(注意力の偏り)
- 集中力が持続しない
- 一つの物事にじっくり取り組めない
- ミスや忘れ物が多い
- 課題や作業の段取りが苦手
- 整理整頓が苦手
- 集中力が必要な課題を後回しにする
- 気が散りやすい
- 興味あるものには、過剰に集中する
など
多動・衝動性(自己コントロールの困難さ)
- そわそわと落ち着かない
- 深く考えずにすぐに行動に移してしまう
- 気になる物が目に入ると危険をかえりみずにすぐに反応してしまう
- 相手のことを考えずに出し抜けに話し出して、他人を傷つけてしまったりする
など
協調運動が苦手
協調運動(2つ以上の動作を同時に行う)が苦手で不器用さが見られたり、書字障害が併存することがあると言われています。
二次障害
注意欠如・多動症の症状により、社会的な不適応が生じた結果、不安や不眠、易刺激性、抑うつ気分などを生じたり、他の精神疾患を併発することがあり、これらを二次障害と呼びます。
注意欠如・多動症の治療
薬物治療
現在、国内では注意欠如・多動症には、4種類の治療薬があり、その内の3種類が成人に使用可能です。
いずれの薬剤も不注意や多動・衝動性の症状に対して、効果を期待できますが、それぞれの薬で効果や作用時間などに違いがあります。
また副作用が見られる可能性もあるため、当院においては、ご本人の身体面の状態も含めて、適切な薬剤を選択するよう努めています。
また不安や不眠、易刺激性、抑うつ気分などが強い場合や、他の精神疾患を併存している場合は、それらに対する薬物療法も必要に応じて行っていきます。
心理社会的療法
注意欠如・多動症の方が生活に困難を感じている症状を「治療」するのではなく、個性・特性として生活がスムーズにいくように「サポートする」という視点で支援していきます。
そのためにはまず患者様ご自身が、ご自分の特性について理解できるよう、心理検査などの結果を必要に応じてご説明し、特性についての理解を深め、より良い対処法を獲得できるよう一緒に考えていきます。
また注意欠如・多動症の症状のために、周囲との摩擦・トラブルが生じていたり、学校生活や社会生活がうまく送れない場合には、周囲の方々へその特性を理解してもらい、工夫できるところがあれば取り組んでもらうなど、環境調整を行うこともとても重要です。
ご本人のご希望があれば、ご家族や学校、職場に情報提供させていただき、社会生活が円滑に送れるよう一緒に考えていくこともできますので、お気軽にご相談ください。