統合失調症とは
統合失調症は、考えや感情などを整理したり、まとめたりすることが難しくなる病気で、慢性的な精神疾患の⼀つです。
本来あるはずのないものが⾒えたり聞こえたりする、幻視、幻聴などの幻覚や、妄想などの陽性症状のほか、感情表出や意欲が乏しくなる陰性症状、判断⼒や記憶⼒が乏しくなる認知機能の低下などの症状も⾒られます。
統合失調症の患者数は、⽇本の全⼈⼝の約1%にあたる100万⼈程度いるとされており、それほど珍しい病気ではありません。
発症に性差はありませんが、主に10代後半〜20代の間に発症することが多いです。
統合失調症の原因
原因については、はっきりとわかってはいませんが、脳の器質的なものや、遺伝的なもの、過度なストレス環境によるものなど、さまざまな要因が関係してくると⾔われています。
統合失調症でよく⾒られる症状
発症当初は「陽性症状」が主な症状であることが多いですが、次第に「陰性症状」や「認知機能障害」が⾒られ、⽇常⽣活に⽀障が出てくることがあります。
陽性症状
- 実際にいないはずの⼈やものが⾒える、気配を感じる
- 知らない⼈の声が聞こえる、⽿元でずっと誰かが話しかけてくる
- 誰かに監視されている、盗聴されていると感じる
- 他⼈から危害を加えられている、悪⼝を⾔われていると感じる
- ネットやテレビなどの記事が⾃分のことを⾔っていると感じる
- 話があちこちに⾶んで、うまくまとまらない
陰性症状
- 表情や感情が乏しくなる
- 活動性が低下し、⾃宅に引きこもりがちになる
- 周りのことに興味、関⼼がなくなる
認知機能障害
- 集中⼒や理解⼒が低下し、家事や仕事がうまくできなくなる
- 相⼿の話がうまく理解できない
- ⾃分の気持ちや考えが整理できない
統合失調症の診断
精神科の病気全般に⾔えることですが、統合失調症を正確に診断するような検査などはありません。 そのため、診察の中でご本⼈やご家族などから、⽣活や症状などで困っていることを詳しくお聞きしながら、診断を⾏います。
統合失調症の治療
統合失調症の治療は、薬物療法と⼼理社会的な治療(リハビリテーションや精神療法)を組み合わせて治療を⾏います。
薬物療法
統合失調症は慢性の精神疾患で、症状の改善や病気の進⾏を抑えるために薬物療法を⾏います。
統合失調症の治療に⽤いられる薬は主に「抗精神病薬」と呼ばれ、主に幻覚や妄想などの陽性症状を改善する作⽤の他、不安感や不眠などの症状を改善する作⽤や感情や意欲低下などの陰性症状を改善する作⽤などがあります。
現在は抗精神病薬の中でも副作⽤の少ない「⾮定型抗精神病薬」を使⽤することが主流ですが、患者様の症状に対する効果や副作⽤などを⾒ながら、薬の種類や量を、外来診療の中で調整していきます。
また薬物治療にはある程度の時間がかかるため、病状の程度によっては、⼊院治療をお勧めする場合もあります。
統合失調症は再発しやすい疾患であり、内服を中断すると2年以内に80%以上の⽅が再発するという報告もあります。
再発を繰り返すことで、病状が重くなったり、薬が効きにくくなったりすることもあるため、症状が改善されても、再発を予防するために定期的な通院と内服の継続がとても重要です。
⼼理社会的治療(リハビリテーションや精神療法)
症状がある程度薬物療法で改善されてくると、⽇常⽣活に戻るために学校や職場へ復帰することになりますが、物事を整理して考えたり、集中して作業を⾏うことが難しくなる認知機能障害が⾒られる場合には、以前のように通学したり仕事をすることが難しく感じられます。
また、意欲の低下などの陰性症状により、外出することや⾝の回りの家事などを⾏うこと⾃体も難しくなる場合もあります。
外出や⽇常⽣活が困難になると、⽣活リズムが乱れ、服薬も不規則となり、再発のリスクを⾼める可能性もあります。
そのため、陰性症状や認知機能障害のために思うように⽣活することが難しい⽅には、薬物療法と合わせて、精神科デイケアなどへ通うリハビリテーションをお勧めしています。
⽣活リズムを安定させ、簡単な作業などを⾏うことで集中⼒や作業能⼒の回復を図り、他者とのコミュニケーションやつながりの中で⾃⼰肯定感を再構築していく効果もあります。
当院では精神科デイケアは併設していないため、ご希望される⽅は主治医や精神保健福祉⼠へまずご相談いただき、他施設と連携して治療を進めていきます。