不眠症とは
睡眠は⼈間にとって必要不可⽋なものですが、⽇本では成⼈の約10⼈に1⼈が、「寝つきが悪い」、「眠りが浅い」、「夜中に何度も⽬がさめる」「⼀度⽬が覚めると再び眠りにつきにくい」などの慢性的な不眠の症状で悩んでいるとされています。
このような不眠の症状が⻑期間続くことで、⽇中の眠気、注意⼒の低下、疲れやすいなど⽇常⽣活に⽀障が出る状態のことを不眠症と呼びます。
不眠症は20〜30歳代に始まり、加齢とともに増加し、中年、⽼年と急激に増加します。
60歳以上になると約3⼈に1⼈が何らかの睡眠問題で悩んでいるという報告もあります。
また、男性よりも⼥性に多いと⾔われています。
不眠症の原因
不眠症は⼀つの病気ではありません。
⼤部分の不眠症にはそれぞれ原因があり、対処法も異なります。
極度のストレスや不安などの⼼理的要因、体の病気や症状が原因で起きる⾝体的要因、薬やアルコール、カフェイン、ニコチンなどが原因で起こる薬理学的要因、不規則な勤務やライフスタイルの変化(育児、介護など)、騒⾳などの環境要因など、不眠症の原因は多岐に上ります。
そのため、患者様⼀⼈⼀⼈の原因に応じた対処⽅法が必要です。
また、多くの⼼の病気は不眠を伴うため、不眠以外の症状がないかをしっかり調べることも⼤切です。
不眠症の診断・タイプについて
⽇本⼈の睡眠時間は平均して7時間半程度ですが、睡眠時間には個⼈差があり、⼈によって⼗分な睡眠時間の感じ⽅には⼤きな開きがあります。
また、健康な⼈でも年齢とともに睡眠が浅くなり、睡眠時間も徐々に短くなっていきます。
そのため、不眠症の診断には「⽇中の活動に⽀障が出ているかどうか」ということが重要になります。
短時間睡眠でも昼間の⽣活に⽀障がなければ、不眠症とは診断されませんし、逆に平均以上に睡眠がとれていても何かしらの不調が出ている状態であれば不眠症と診断されることもあります。
不眠症は⼤きく4つのタイプに分類されます。
⼊眠困難
眠りにつくまでに時間がかかる状態で、通常30〜1時間経っても⼊眠できない状態を⾔います。「布団に⼊っても⾊々と考えが浮かんでしまい寝付けない」、「眠ろうとしているのに⽬が冴えて眠れない」などストレス、不安・緊張などの⼼理的要因によって起きやすいと⾔われています。
中途覚醒
眠りが浅く、就寝中に何度も⽬が覚めてしまう状態で、熟睡感が得られず、⽇常⽣活に影響が出ることもあります。
睡眠時無呼吸症候群や加齢、頻尿など⾝体的要因の他、アルコールやカフェイン、ニコチンなどの摂取によって眠りが浅くなることが原因となることもあります。
熟眠障害
睡眠時間は確保されているものの、眠りが浅く、熟睡感がなかなか得られていない、疲れが取れないと感じる状態です。
⾝体の病気やアルコールなどの摂取により眠りが浅くなる場合の他、うつ病など⼼の病気が原因の場合もあります。
早朝覚醒
起床予定時刻よりも2時間以上早く⽬が覚めてしまい、その後は起きる時間まで眠れない状態が続くことを⾔います。
加齢によるものの他、うつ病など⼼の病気が原因の場合もあります。
不眠症の治療
まずは不眠となっている原因を探し、取り除けるものは取り除いていきます。
⾝体の病気が影響している場合には、それぞれの専⾨医に診察を仰ぎ、⾝体の病気の治療と並⾏して、不眠治療(⽣活⾯の改善や薬物療法など)を進めていきます。
なお、ナルコレプシーや過眠症、レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)による不眠、などの特殊な睡眠障害が疑われる場合は、睡眠障害の専⾨外来への受診をお勧めすることがあります。
⽣活⾯の改善
⽣活⾯の改善は、ご⾃⾝で⽣活を振り返り、改善した⽅が良いところがあれば、出来るところから継続して取り組んでいくことがとても重要です。
もちろん、外来診察の中で改善できるところを⼀緒に考えていったり、定期的に取り組みを振り返りながら、不眠症状が改善していけるようサポートしていきたいと思います。
以下に挙げることはほんの⼀例ですが、私⾃⾝も取り組んでいることですので、ご参考にしていただければ幸いです。
- 就寝、起床時間を⼀定にする(私は朝6時に起床し、22時に就寝するよう⼼がけています)
- 昼寝をしすぎない(⽇中眠気がある時には、15時までに20〜30分程度にする)
- なるべく夜22時〜6時の間は睡眠を確保できるよう夜更かしをしない
- ⼣⾷は、寝る時間の3時間前までに終わらせる
- アルコールは睡眠の質を落とすため、寝酒しない
- 寝る前に PC やスマートフォンを⾒ない
- 朝起きたら、カーテンを開けて、太陽の光を浴びる。
- 少しでも良いから朝ごはんを⾷べる
- ⽇中の適度な運動(ウォーキングや家事などでも良いので、出来る範囲で体を動かす習慣が⼤切です)
- ⽇が暮れたら、⽩⾊ではなく暖⾊の光にして、気持ちのリラックスを⼼がける
- カフェインを摂りすぎない(コーヒーなどは⼀⽇カップ2〜3杯程度にとどめる)
- 部屋の温度、湿度を⼀定に保つ(エアコンを積極的に活⽤する)など
薬物療法
不眠症状の程度によって、医師が必要と判断した場合には、睡眠薬などの薬物療法を⾏います。
当院では、患者様のお話を伺い、不眠の原因、状態を考慮しながら、軽度の場合には⽣活改善の⼯夫を中⼼に⾏い、それでも改善が乏しい場合や、不眠による⽇常⽣活への⽀障が⼤きい場合には、副作⽤に留意しながら薬物療法を⾏なっていきます。